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カンヌライオンズ受賞作品から見る、デジタル時代の次世代マーケティング最前線

柿野 拓 作成者: 柿野 拓 2023/11/06

みなさん、こんにちは。Braze の柿野です。2023年6月に開催されたクリエイティビティーの祭典「カンヌライオンズ」の現地に行ってきましたので、今日はその受賞作品からみる、デジタル時代の次世代マーケティング最前線と題し、レポートしたいと思います!

カンヌライオンズ?ピンとこない方も多いと思いますが、、、

まず、映画祭ではないです。。。が、実は映画祭のサイドイベントとして開催されていました。

(会場のいたるところに、70周年とライオンの組み合わせが!)

今年で、開催70周年を迎えるカンヌライオンズ、正式名称は「Cannes Lions International Festival of Creativity」で、モットーは「Creativity will drive your business forward(クリエイティビティーこそがビジネスを前進させる)」です。まさにクリエイティビティーの力を信じるクリエイターやマーケター、団体組織が集うグローバルの祭典です。世界を明るくポジティブにする、というマインドで開催され、自分の生き方にも似てて、とても親近感が沸きます(笑)。

さて、カンヌライオンズではネットワーキングやセミナー、サプライズゲストの登場など、多種多様なプログラムがありますが、一番のメインはアワードになります。

世界中のブランドが社会課題をクリエイティビティーで解決する、をテーマに作品を多数応募、評価が高かった作品にアワードが授与されます。特にデザイナーやクリエイターの方にとっては登竜門、アワードを受賞すると「人生が変わる」ほどのインパクトがある、と言われています。

(Cannes Lions 2023 アワード一覧)

今年のカンヌライオンズでは OpenAI、ChatGPT などに代表されるAIトピックが多く、その可能性の一方で、人間や社会に与えるリスクも様々な視点で語られる場面があり、とても印象的でした。特にGoogle社のAI開発の責任者の方が「我々もAI技術の活用シーンを特定できているわけではない、ぜひ、その可能性を含め、一緒に考えていきましょう!」というコメントにはかなりワクワクしました。ビジネスやマーケティングの世界では消費者やビジネスパートナーとの共創はとても大切なキーワードです。まさにAIの文脈でも同様のことが起きています。

さて、数多くの作品の中から、特にBrazeとも関係の深いデジタルマーケティング領域に特化し「これ、すごいじゃん、秀逸!」と私の独断と偏見でいくつか作品を選びました。これら作品をご紹介しつつ、背景や社会トレンド、そしてそれを支えるテクノロジーなどを自分なりに読み解きたいと思っています。

では、まず一つ目から、、、

開封しないメールに注目「あなたのドッペンゲルガーが現れました!」


デジタルマーケティングの世界で、メールは無料で便利に送付できるコミュニケーションチャネルである一方で、急激に開封率が落ちており、マーケターには頭の痛い課題です。そのメールマーケティングにクリエイティブなアプローチで再度、光を当て、ソーシャルでの拡散と、収益に繋げる施策としてメキシカンフードチェーン「Chipotle」が面白い施策を行いました。数十万通りの組み合わせがあるブリトーの中から、自分が注文した組み合わせと、全く同じ注文した人が現れたら、リアルタイムに「あなたのドッペンゲンガーが現れました!」というタイトルのメールを送ります。「ドッペンゲンガー」とは自分自身の姿を自分でみる幻覚の一種で「自己幻視」という現象で、こんなタイトルのメールが届いたら、思わず開封しちゃいますよね!しかも、驚きつつ、面白いので、TikTokに動画アップする人も続出、どんどん拡散します。陳腐化するコミュニケーションチャネルをアイデアとクリエイティビティーとテクノロジーで再生させる取り組みはまさに顧客起点のデータドリブンマーケティングとして、秀逸と言えるでしょう。

そして、二つ目、、、

清掃員をメディア化?!ビジネスマン、飲食店の三方良しをデジタルとアナログで演出する


深夜残業のビジネスマンはもちろん大変ですが、その人たちが帰らないと、仕事が始められない清掃員の方々がいます。また、会社に残っている人が多く、周辺の飲食店も閑散としています。それら困っている人たち全員をデジタルとアナログで繋ぎ、合わせて認知拡大とビールの収益も高めるハイネケンの作品です。会社を巡回する清掃員の背中にはハイネケンのロゴと共にQRコードが印刷され、ブランド認知の獲得を狙う動くメディア、となります。また、コンバージョンとして、バーにビジネスマンを送る送客役でもあります。仕事から一旦解放されたビジネスマンは疲れを癒し、清掃員は仕事を早く始められる。さらにすごいのは清掃会社7社と契約、アルゼンチンの民間企業の85%をカバーし、一部の人だけの狭い範囲のキャンペーンにしなかったこと。多くの人に体験環境を整備したのも素晴らしいと思います。QRコードをスマホで読み取る、というちょっとアナログな手法は人間的なコミュニケーションも生み、清掃員のおばちゃん?との会話でほっとする瞬間「私、何やってるのかしら?バーでも行ってこよ」となる人も多いと思います。ゴーストバスターズを思わせるような「オフィスクリーナーズ」は働きすぎのビジネスマンと飲食店の救世主?ハイネケンのブランドイメージも引き立てる素晴らしい作品だと思います。

さらに三つ目、、、

インフレに対抗、貧困層の生活をクリエイティビティーとデジタルの融合で守り続ける


カナダのフードバンクとフードデリバリーサービス「SkipTheDishes」がインフレという社会課題に正面から向き合った「The Inflation Cookbook」という作品です。食料品の情報をウェブクローリング、最新の価格状況や今週値下がりした購入すべき食材、そして値上がりした避けるべき食材の情報をわかりやすく表示、そのまま配送手配もできます。また、食材で出来上がる料理レシピと共に、完成料理イメージをAIで自動作成しています。一般的に、人間が貧困という状況におかれると、まず、食事の回数が減り、高カロリーで不健康な食事を取るという傾向が強くなります。このサービスの活用で、生活環境が厳しい人でも、お財布に優しく、健康的に過ごすことができます。しかも、広告やマーケティングコミュニケーションの世界から飛び出し、ビジネスモデルやサービスそのものになっていることから、キャンペーン的に数字を短期で伸ばすから、持続的な収益を生み出すプラットフォームとして機能させるという意味で、秀逸なアプローチだと思います。

最後は、、、

只今、ワールドカップをお届け中、、、広告費ゼロでアルゼンチン国民の半分にリーチする


フードデリバリーサービス「PedidosYa」はアルゼンチンがワールドカップ優勝を決めると即座にマーケティング施策の計画を始動。歓喜に沸いた翌日には、約600万人以上の会員にまず、偽のプッシュ通知を送ります。「あなたの注文をお届け中です!」そんな注文してないよ!と思いつつ、中身を確認すると、、、

ご注文の「ワールドカップ トロフィー」を配送中です。お、すごっ、マジかっ!

アルゼンチン代表が乗る航空機の移動情報をリアルタイムで捕捉する「FlightRadar24」と連携し、その移動情報を追跡し続けて、いつものピザ配送アイコンが「トロフィー」に変わっています。ソーシャルでメッシよりバズり、アルゼンチン国民の約半数へのリーチに成功しました。優勝してから、クイックに施策を計画、外部ウェブサービスを柔軟に組み合わせ、クイックにシステム化、メッセージをプッシュ配信し、配達情報で位置情報を送り続ける。広告費ゼロで、認知と新規会員獲得、そして収益の最大化をもたらす。まさに、クリエイティビティとスピード、そしてテクノロジーが高度にバランスした、秀逸なアプローチだと思います。

さて、4作品いかがでしたでしょうか?

私たちと一緒にカンヌライオンズを目指しませんか?

今日は 26,000以上の応募作品の中から、デジタル時代の次世代マーケティングという切り口で、秀逸な4作品をご紹介しました。皆さまが向き合っている市場と同じく、背景には社会課題があり、困っている人たちがいて、企業がすべきミッションと共に収益化の必要性もあります。課題が複雑化すればするほど、自社とその関係会社だけで、解決するのが難しくなります。自分たちが向き合う顧客だけでなく、より遠い存在(多様性)と共創(受容性)することも、重要なアプローチとなるかもしれません。

実は、上記の作品の中に、Brazeで実現しているものがあります。カンヌライオンズにチャレンジしてみたい!と少し胸アツになった方、ぜひ、ご連絡ください。

日本から世界へ。カンヌライオンズを目指す仕事と作品をぜひ、一緒に作っていきましょう!

(会場入り口付近の巨大看板。Brazeはマーケター、クリエイターを応援しています!)

柿野 拓

柿野 拓

Brazeのマーケター&ストラテジスト。外資系プラットフォーマー&日系スタートアップで、事業創造&マーケ中心に従事後、Brazeへ。顧客&マーケ起点で夢想するのが大好き。会社や社会、そしてニッポンを変えたい人を、最新テクノロジーで応援したい!と思っています。