Get Real with Braze


DATA is BOSS データを制するものがビジネスを制す 〜Get Real with Braze イベントレポート〜

Team Braze 作成者: Team Braze 2024/05/14

2024年4月22日、第3回目となる「Get Real with Braze」が東京・虎ノ門で開催されました。「Get Real with Braze」 はテクノロジーとクリエイティブを融合させ、社会や会社を変えたいと思う人たちをつなぐネットワーキングプログラム。

今回は「DATA is BOSS データを制するものがビジネスを制す」というテーマのもと、急成長を遂げる株式会社一休の榊 淳氏が講演。

パネルディスカションには株式会社電通デジタルの有益伸一氏も登壇し、活発な意見交換が行われました。本記事では当日の内容をレポートします。


OPENING

冒頭、Braze代表取締役社長の水谷篤尚よりご挨拶させていただき、複雑化する市場環境において、多様化するお客さまのニーズや行動を捉えるのが難しい時代に、企業はいかに生き延びていけばよいのか。いま起きている事象や変化をみなさんと一緒に考えたい、という本イベントの趣旨をお伝えしました。

リアルタイム、マルチチャネルでパーソナライゼーションを実現するBraze

続いてBrazeの吉永敦が、2024年1月に開催されたラスベガスの民生技術の見本市、CESの最新情報をフィードバック。世界最大の化粧品会社ロレアルが掲げていた「みんなを対象とした最大公約数ではなく、個人に最適化した美を提供する」というメッセージが時代を表していると述べました。

「Beauty for everyoneからbeauty for each powered by Tech」というフレーズが印象的で、Brazeもパーソナライズされた体験をリアルタイムに届けすることに注力しています。

例えば1週間前のお肌の状態をもとに、今日、提案されても意味がない。今朝のお肌の状態に合ったアドバイスや提案を1.1秒で回答できると良いですよね。スマホ以外のデバイスも多様化してますが、BrazeはそれらとAIを組み合わせハイパーパーソナライゼーションを目指します」。

Ray-Ban Metaのスマートサングラスをかけた吉永。

写真の撮影とシェア、ビデオ通話、ライブ配信、プレイリストの再生、電話の発信、SMSの送信などのすべてを音声コマンドで直接行える商品として、最前線のウェアラブルアイテムも紹介しました。


Braze 廣川侑は、Brazeと連携してできるスマートTVの新たな可能性を実機を使いながら、プレゼンテーション。

従来TVは一方通行なコミュニケーションが想定されているため、カスタマエンゲージメントの文脈では有効な顧客接点とは捉えられていませんでしたが、コネクテッドTVの利用が約50%となり、観られているチャネルもBS・CSよりもYouTubeが多くなっていると説明しました。


ヘルスケア、クッキング、ゲームなどさまざまな業界がTV向けアプリをリリースするなど、もはやTVは決まった番組を全員に一斉配信するものではなく、個人が好きなコンテンツを選べるデバイスになっています。

ではこの先はどうなるのか?

TVを通じてユーザーがアクションを起こし始める時代が来ます。

「番組内に欲しい商品があれば、ボタンを押すとスマホに通知、そのまま購入できる。興味があるレストランや宿を見たときにもボタンを押すとスマホに通知、現地の天気や移動時間が表示される、といった使い方ですね」。

顧客接点が爆発的に増えるからこそ、データを正しく活用した次世代のエンゲージメント戦略は、ますます欠かせないものになっていきます。

SPECIAL KEYNOTE

特別講演に登壇したのは、LINEヤフー傘下の高級ホテル・高級旅館専門予約サイト「一休.com」を運営する株式会社一休の代表取締役、榊 淳氏。

一休の売上が右肩上がりで、コロナ後も順調に成長している理由は、市場自体が追い風だから?広告にお金を使っているから?事業規模が小さいから?

答えはすべてNO。
ではなぜ一休は成長し続けているのか。

榊氏は、すべてはデータドリブンな経営に舵を切ったからだと言います。

売り場、プロモーション、価格を徹底的に最適化せよ

「顧客向けの施策は、商品の差別化と売り方の差別化があります。商品を作っていない一休では、商品の差別化はできないので、売り方の差別化で勝負します。ただ一休は仕入れもありません。ホテルの部屋を出しているのはホテルであって在庫を持っているわけではない。つまりわたしたちができるのは、売り場、プロモーション、価格の最適化。そこにしか戦略の変数はないので、この部分に対してデータドリブンな施策を打っています」。

売り場の最適化とは、ABCDEさんのそれぞれ5人が「12月20日に1名」と同じ条件で検索しても、各自がどれを購入する確率が高いかのデータに基づいて、異なる検索結果を表示すること。

また、同じAさんが沖縄で検索する場合も、1名ならビジネスホテル、2名ならリゾートホテル、3名以上ならコンドタイプなど、人数に応じて検索結果は変わります。また、価格の最適化と言っても、ホテルの価格はホテルが決めるもの。

原資で値引きができる一休は、割引クーポンを出しています。

「ちょっと驚かれるのですが、クーポンの価格もリアルタイムで計算しています。お客さまが検索している裏側で購入の確率データを出していて、それを理解した上で、利益が出る割引価格を提示しています。日程によってももちろん価格は変動しますし、ありとあらゆるプライシングを最適化することに取り組んでいます」。

競争環境を見える化する
顧客軸で利益構造を見える化する

事業内容は異なっても、どのようにお客さまを理解するかはセオリーがあると述べた榊氏。

顧客の行動を見える化することについて、3つのポイントに触れました。まず大事なのは売上から営業利益までの数値を見ること。部門別、商品別ではなく、顧客タイプ別の利益構造を理解することです。

次に売上に至るプロセスを見ること。財務データをいくら見ても、どうしたら売上が上がるかは書いてはいない。だから市場規模×シェアとか、訪問者数×予約購入確率×単価とか、在庫量×在庫消化率を見ること。

そして最後が顧客別の累積利益を理解すること。初めに購入してくれたあと、次回も購入してくれるかを分析します。

著書の「DATA is BOSS」に書かれた10個の分析からは、2つをピックアップ。

「1つめは、自社の競争環境を見える化すること。多くの企業が市場全体を見ているとは思いますが、一休では分解することに力を入れます。宿泊施設でもリゾートホテル、ビジネスホテル、旅館で分解すると自社は何が強くて弱いのかがわかる。価格で分解すると高価格帯はシェア取れていても、低価格帯は取れていないことがわかる。これらを踏まえて、お客さまは我々のサービスをどんな理由で選択したのかを分析するのがポイントです。選ばれる要素としては、お得に予約できる、ポイントが貯まる、サイトが見やすいなどありますが、では次の一手をどうしたらいいのかをオセロのように考える。どこを頑張ればどこがひっくり返せるか。どの市場に狙いを定め、どんな施策をすべきか。複数の切り口で分解してみてください」。

2つめが顧客軸で利益構造を見える化することです。

ヘビーユーザー、ライトユーザー、新規ユーザー、休眠ユーザーを見たときに、ヘビーユーザーは利益が出ているけど、新規ユーザーは出ていない。レジャーは利益が出ているが、出張は厳しい。など、一休では購入1件ごとにP/L(Profit and Loss statement)を出しています。

「1週間ごとには事業の状況を100枚のレポートにして全社員に共有しています。社員の理解が揃いますし、上司に数字を説明するようなMTGもなくなる。状況がよく見えるので、どういう施策を打てばいいのかクリエイティブなことに打ち込めます。わたし自身も顧客の理解を深めることに8割の時間を割いています。データは誰でもアクセスできる酸素のようなものなので、データドリブンな企業に変身させるのは個人の力でもできます。ぜひトライしてみてください」。

会場からは大きな拍手が湧きました。

PANEL DISCUSSION

「データドリブン経営を実践するには」と題したパネルディスカッションには、榊氏とともに、データドリブンでクライアントのビジネス課題を解決している電通デジタルの有益伸一氏もパネリストとして参加。

モデレーターはBrazeのカスタマーサクセスマネージャー紺野 賢が務めました。紺野から投げかけた質問は5つです。

Q1. 新規と既存の予算比率や人的リソースの配分はどうなっていますか?

新規も既存も同様にケア
バラバラのKPIで動かない

榊氏いわく、一休はもう20年続けているサービスなので、お客さまの大半がリピーターになっており、当然既存ユーザーは大切にしているとのこと。とはいえ新規ユーザーを蔑ろにはできないため、リソース配分は同等だそうです。

さらに言うと新規と既存はそんなにはっきり分かれるわけではなく、5年ぶりに利用するのであれば、そのお客さまはほぼ新規ユーザーなので、グラデーションで捉えてパーソナルな接客を心がけているそう。

また榊氏は、世の中の会社は新規ユーザーにお金を使いすぎていると指摘。

「部署が分かれている場合など、新規獲得チームは獲得のKPIを見ている。共通理解がないまま、部署によって社員によって見ているKPIがバラバラだとそういうことが起こると思います」というのが有益氏の見解です。


Q2. デジタルマーケティングの領域では売り上げに至るいくつものステップがありますが、中間指標についてはどう扱っていますか?


お客さまがランディングしたときの状態を見る
中間指標ではなく、結果を見る

訪問数、メールのオプトイン、開封率…すべてをパーフェクトに管理している企業があったとしたら最先端。一休ではそこまで細かくは見ておらず、それよりもお客さまがランディングした時の状態に注目しています。

「“ 一休 ” で検索したのか。“ 箱根 旅館 ” で検索したのか。“ 箱根 ○○旅館 ” で検索したのか。カジュアルな宿を探しているのであれば、一休はハマらないかもしれない。ではどういう接客をするべきか。パーソナルな接客の努力をしています」と榊氏は回答しました。売上につながらない訪問者数やクリック数は評価しない。

仮に特定のチャネル、例えばメールだけに着目したりすると、それはサービスを悪くする可能性もあるというのが榊氏の考えです。

有益氏が、経営の指標もデジタルマーケの指標も細かく見るスタンスかどうかを聞くと、「すごく細かく見るところは見る」と榊氏。

例えば4月3週目は売上が良くなかった。要因としてはもうGWの予約は取り終わっているからか。

それともほかにあるのか。

去年と比べてみると、SEOの流入が減っているとか、単価の低いところが減っているとかがわかってくるので深掘りをして分析する。必ずしも経営者がやるべきだとは思わないけれど、経営者だからこそ必然的に問いが出てくると述べた榊氏。有益氏もそのスタンスに賛成で、意思決定をする人がデータの細かいところを追うのが大切だと追記しました。

また榊氏は多くの企業の方はKPIを固定しすぎているのではと言及。

「先週と今週でも状況は違います。天災があったとか、GWだったとか、KPIは刻々と変わるという前提に立つべきです。先週良かったところは加速すればいいし、悪かったところは改善すればいい。それさえできれば企業は成長します」。

多くの現場を見ている有益氏も、意思決定をする際にKPIを固定にしているケースは確かに多いとコメント。KPIを変えてもデータを速やかに連携できること、分析する人がすぐ動けることが重要だと述べました。


Q3. 人によっては感じるパーソナライズによる気持ち悪さをどう排除していこうと考えていますか?

パーソナライズしすぎず
Most Popularもほどよくブレンド

有益氏が考えるパーソナライズの気持ち悪さは、実際のコミュニケーションと同様。自分が相手のことをよく知らないのに、相手が自分のことをよく知っているのは気持ちが悪いのが当然ではと語ります。

「だからこそブランドのことを知ってもらい、エンゲージメントを高めた状態でパーソナライズするのが大切です」。

また榊氏は著書内で「以前はパーソナライズ強めのほうが反応は良かったものが、ここ数年の変化でその傾向が弱まっている。ヘビーユーザーでも自分好みのものばかりではなく、世の中の売り上げランキング、いわゆるMost Popularを多めに織り交ぜるほうが好まれるようになっている」と書いています。

あえて全然違うもの、意外性のあるものを出して、セレンディピティを生むような実験をしたことがあるかという有益氏の問いかけには、そのやり方を教えてくれた榊氏。

パーソナライズするときに通常は類似のお客さま30人くらいのデータの平均値を使うところを、5人にすればセレンディピティは高まり、逆に100人すればセレンディピティは弱まると述べました。

「普通はエリアから検索する方が多いのですが、例えば来週の土曜日が空いている。エリアは日本全国、価格は高い順。天気が良さそうだからここに決める…など、変わった検索や行動をする方のデータを使うと、とても斬新なレコメンドになりますね」。

Q4. 「誰に?」はどんどんAIで業務がカバーされつつありますが「何をするか?」のクリエイティビティの領域でのAIの活用はどのように考えていますか?

ファジーな質問にも
的確な回答を返せるように進化中

まず回答されたのは有益氏。

メールマーケティングを5万通するとして、一人ひとりパーソナライズした内容を送るとなったら、リソースには限界がある。この部分に生成AIを活用している企業が増えていると話します。

新規獲得に広告を打ったなら、バナーに何と書き、ランディングページには何と書いたのか。その情報を使ってCRMまでできている会社はどれくらいあるのか。ファネルの最初のデータを活かして、膨大なデータを管理してメールの内容を決める。そこに生成AIを活用することをいろんな企業が取り組み始めています。

「AI前後で明確に変わったことがあります。例えばゴルフ場を予約すると考えたとき、条件を言語化して、検索ワードにスパッと落とせる人はそんなに多くない。人間はぼんやり考えるという状態があるものなので、AI以前は調べる、探す、考える、迷う、イメージすることをしていました。今はAIが普及したことによって、曖昧な段階から要約、見つける、提案、予測、具現化をしてもらえるようになったんですね。求めていた答えに最短で辿り着けるような時代です」。

「驚いているのはAIが言葉を理解しつつあることです」と語ったのは榊氏。

20年前と変わらないインターフェイスで、エリアを決めて、日程を決めて、というのはどうなのか。

いま実現したいのは「東京から2時間くらいで、和モダンで、おばあちゃんが喜ぶところ」といった検索に応えることだそう。

単語や文章をベクトル表現に変換するエンベッティングという手法によって、ふわっとした質問や大量の口コミを使うことも理屈上はできるのですが、現段階での信頼性はいまひとつ。

「“ゴルフができる宿” で検索すると、青々とした芝生の宿が出たりするんですよね。惜しい…!という感じです(笑) 」。

数年以内には使えるものにすべく、精度を高めることに取り組んでいます。


Q5. DATA is BOSSを実現するには、まずどのようなアプローチから始めるべきでしょうか? 単独型と協働型、自社に向いているのは?


ビジネス人材とデータ人材の連携は必須

前提として、単独型が向いてる会社と、協働型が向いてる会社がある、と述べた榊氏。

サービスがシンプルな一休は単独型、ヤフーのように多岐にわたるサービスを展開している場合は協働型が向いています。

「一休はエクセルでいうと横のカラムが少ないのですが、ヤフーは多い。“こういう検索をした人に、こういうカードローンを勧める”というのは複雑なので協働作業が必要です。まず自社はどちらが向いているかを考えてみてください」とのアドバイスでした。

また、協働型でうまくいっている会社の一例としてはZOZOを挙げました。理由はビジネス人材のリーダーが、データのカラム構造を理解しているため意思疎通が円滑だから。ビジネス人材にとって、エクセルは身近でもデータベースは遠いと感じる傾向があるそうですが、一緒だと。

「上100行だけエクセルにすれば、データの構造がわかるはずでは」というユニークな提案もありました。

また、もともと事業会社にいたときは単独型で業務を進め、現在の起業支援では協働型を推進することが多いという有益氏は「生成AIが普及したことによって、ビジネス人材がデータ人材に寄ってきています。協働型で成功するコツは、自分ごととして認識を持ってもらうこと。それが最低限です」と締めくくりました。

和気藹々ムード、会話が弾み
つながりも生まれた懇親会

パネルディスカッションの後は、お楽しみのネットワーキングタイム!アルコールと素敵な食事を片手に、みなさんが交流されている姿が見られ、今回もさまざまな業界で活躍されている方々が最新情報を共有する貴重な機会となりました。

Brazeは、引き続きマーケティング起点でより良い社会を作りたいと願うビジネスリーダーのみなさまにむけて、魅力的なコンテンツとネットワーキングの場を提供していきます。

また、次回「Get Real with Braze」でお会いしましょう。


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