Webプッシュ通知の利用は、顧客とのリアルタイムのコミュニケーションや離脱ユーザーの再獲得に役立ちます。しかし、その効果を最大限に得るためには、いくつかの注意点もあります。
この記事で、Webプッシュ通知の概要(仕組みや重要性)、企業視点のメリット、知っておくべき注意点、配信に役立つツールなどをチェックしていきましょう。
1. Webプッシュ通知とは?
Webプッシュ通知とは、「Webブラウザを介してユーザーに配信されるプッシュ通知」のことです。メールアドレスなどの個人情報を取得しないことから、ユーザーが気軽に申し込みやすいサービスとして知られています。
さっそく、その仕組みと重要性を詳しく見ていきましょう。
1.1. Webプッシュ通知の仕組み
Webプッシュ通知は、サイト閲覧中のユーザーに「通知を送る許可」を求め、許可してもらえた相手に対してお得な情報を配信する仕組みです。
具体的には「API(Application Programming Interface)」と呼ばれる複数サービスを繋ぐ仕組みを採用しており、WebサイトにJavaScriptによるプログラムコードを埋め込んで動かします。
仕組みは複雑ですが、ユーザーが行う操作は一度の通知の許可だけでよく、メールアドレスなどの個人情報の入力も必要ありません。また実務においては、ITに知見のある一部の企業以外は「Webプッシュ通知に対応したマーケティングツール」を導入して運用する形が一般的です。
1.2. Webプッシュ通知の重要性
Webプッシュ通知が重要である理由には、以下の2点が挙げられます。
消費者行動の変化
多くの方がスマートフォンを手にする時代となり、気になるものはとりあえずネットで調べるという人も増えたため、オンラインマーケティングの重要性が増していること。
個人情報保護規制への対応
2022年4月に改正個人情報保護法が全面施行されるなど個人情報の取り扱いについて規制が強まるなか、通知を許可してもらうのみで個人情報を受け取らなくてもよいWebプッシュ通知が時代に即したマーケティング方法となっていること。
また、後述するメリットのように、Webプッシュ通知は自社製品・サービスのファンを生み出すためにも役立ちます。
1.3. 他のプッシュ通知との違い
ひと口に「プッシュ通知」といっても、その種類はさまざまです。代表的な存在として、以下の3つのプッシュ通知について、その概要を知っておきましょう。
リモートプッシュ通知
インターネット上でサーバーを介して送るオンラインの通知。
ローカルプッシュ通知
オフラインで送信でき、デバイスの中で完結する通知。
リッチプッシュ通知
文字だけでなく画像や動画、音声なども一緒に送れるプッシュ通知
それぞれの違いは、強調したい側面(主に話題としたい側面)にあります。また、仕組みとしてはそれぞれが完全に独立した存在ではありません。まったく同じプッシュ通知であっても、Webブラウザを介していることを強調したい時には「Webプッシュ通知」、画像や音声が送れることを示すには「リッチプッシュ通知」などと呼び名が変わります。
Webプッシュ通知以外のプッシュ通知については、以下の記事も併せてご覧ください。
プッシュ通知の仕組みや種類にはどんなものがある?メリットや通知ポイントを紹介
1.4. メルマガとの違い
顧客に文章主体で情報を届けるマーケティング手法としては、メルマガも挙げられます。メルマガとWebプッシュ通知の代表的な違いは以下の通りです。
Webプッシュ通知 | メルマガ | |
概要 | ブラウザを介して情報を配信する | 登録されたアドレスに向けてメールを配信する |
配信に必要な情報・要素 | 配信の許可のみ | 許可とメールアドレス |
情報の届き方 | デバイス画面へのポップアップ | メールボックスへの到着 |
メルマガとプッシュ通知を比べると、プッシュ通知は、メールアドレスを必要としないことと情報が確認されやすいことに強みを持ちます。デバイスの設定にもよりますが、画面にポップアップされるため、メールボックスに埋もれてそのまま消えてしまうようなことが少ないのも特徴です。
2. Webプッシュ通知のメリット
次に、企業視点で見たWebプッシュ通知のメリットをご紹介します。
2.1. 開封やクリックをしてもらいやすい
Webプッシュ通知のメリットには、通知が開封・クリックしてもらいやすいこと、また、そのぶんコンバージョンに繋がりやすいことが挙げられます。
Webプッシュ通知の配信は、ユーザーからの許可を得た後に行う仕組みです。すなわち、送り先は自社製品・サービスの情報に一定の関心がある人であり、通知が開封・クリックされる可能性も高い傾向にあります。
2.2. 顧客ロイヤルティを高められる
適切なWebプッシュ通知の配信は、顧客ロイヤルティ(ユーザーが企業に対して抱く信頼や愛着)を高めることに繋がります。ユーザーの心をくすぐる情報を定期的に届けることで自社のリピーターとなるファンを獲得でき、結果として他社との価格競争からの離脱が図れます。
顧客ロイヤルティの重要性については、以下の記事も併せてご覧ください。
顧客ロイヤルティの重要性とは?向上させるメリットや顧客満足度との違いについて解説
2.3. 販売の促進に繋がる
前述の通り、Webプッシュ通知はその性質上、開封やクリックをされやすい傾向にあります。タイムセールや割引クーポンの情報など、ユーザー視点で嬉しい内容を配信することで、自社製品の販売・サービスの申し込みを促進できます。なお、Webプッシュ通知を活用して宣伝に成功した企業事例は、この記事の後半でご紹介します。
2.4. 再度訪問してもらいやすくなる
ユーザーからWebプッシュ通知の配信の許可を得た後は、顧客が自社サイトを開いていない時にも通知を送ることができます。そのため、「ECサイトを訪れてWebプッシュ通知を登録してくれたものの購買はしなかった」というユーザーに新商品の登場や割引セールの開催を通知するなど、再訪に繋がる施策を実行できます。
2.5. 低いコストでアプローチができる
Webプッシュ通知は、一般的なマーケティング手法に比べて金銭的にも労力的にもコストの少ないアクションです。例えば、TVやWebのCMであればプロモーション動画を撮影するなどの手間がかかりますが、Webプッシュ通知では不要です。手元の宣伝材料を伝わりやすい文章とともに通知するだけでも一定の効果が見込めます。
3. Webプッシュ通知のポイントや注意点
続いて、Webプッシュ通知で知っておくべきポイントと注意点をご紹介します。
3.1. 同じ内容の繰り返しや頻繁な通知は避ける
強く意識しておきたいのは、同じ内容の繰り返しや過度に頻繁な通知を避けることです。何度も同様の内容が送られてきたり、内容は異なっても頻繁に通知が届いたりすると、ユーザーは不快に感じます。月に1~4回ほどに絞り、とっておきの情報をお届けするなど、厳選したWebプッシュ通知を送ることが大切です。
3.2. 通知する時間帯を考える
配信をする時間帯も重要です。早朝や夜間に通知を送ると、ユーザーから「非常識な企業だ」と敬遠されるリスクが高まります。適切な時間帯は自社の製品やターゲット層によっても異なりますが、開封されやすい時間帯を考え通知することが大事です。
3.3. 通知内容がわかる文言を考える
「結局何が言いたい通知なのかわからない」というケースも、Webプッシュ通知にありがちな失敗です。
Webプッシュ通知では、何の情報の連絡なのかをひと目で理解できる文言が求められています。セール情報であれば、いつ・どこで・何が・どの程度割引されるのかを端的に盛り込むべきです。
3.4. ユーザー別に提供する情報を変えていく
Webプッシュ通知の効果を最大限に発揮するために、ユーザーにパーソナライズされた情報を配信することも意識しましょう。
自社サイトの閲覧状況や時間帯など、たとえ匿名のユーザーが相手であっても、通知内容を考える際にヒントとなる情報は数多くあります。ユーザーを複数のセグメントに分け、それぞれに最適な情報をお届けすることで、顧客体験を飛躍的に高めることが可能です。
【関連用語】プッシュ通知についてはこちら
4. Webプッシュ通知を最適化するためにBrazeの導入を
ここまでご紹介した通り、Webプッシュ通知の内容や頻度を最適化していくためにはデータの活用が欠かせません。その活用のためには、適切な分析が可能なマーケティングツールが求められます。
ユーザー別にパーソナライズされたWebプッシュ通知を配信するためのツールとして、ぜひ「Braze」の導入をご検討ください。
4.1. Brazeの機能や活用メリット
Brazeは直感的に操作しやすいインターフェースが特徴のITソフトウェアツールです。エンジニアへの依存を減らし、マーケティング自身が、アイデアの創出からWebプッシュ通知施策を手軽に実行できます。ページから離脱してしまったユーザーにお得な情報を伝えたり、顧客をセグメントで分類してふさわしい情報を配信したりなど、メリットを最大限に期待できる形でのWebプッシュ通知配信を実現します。
4.2. 事例1
Anthropologie社は、BrazeのWebプッシュ通知を活用して顧客とのデジタル領域におけるコミュニケーションに成功した企業の一例です。
アメリカで衣料品・ホーム用品を販売する同企業は、かねてから店舗内のモダンな雰囲気が自社の強みであると理解していました。そこで、画像を含むWebプッシュ通知により、オンラインでもその雰囲気を味わえるように挑戦。A/Bテストを繰り返すなど絶えず努力を続けることで、業界平均よりも22%高い水準の通知開封率を達成しました。多くのユーザーに店舗の雰囲気を伝えることに成功しています。
4.3. 事例2
アメリカ最大のモータースポーツとして知られる「NASCAR」。70年以上の歴史を持つ同スポーツでは、Webコンテンツへの誘導にBrazeのWebプッシュ通知を活用しました。
NASCARの課題となっていたのは、Webプッシュ通知を許可するユーザーが一定数いる一方で、通知が必ずしもNASCARのページへのアクセスに結びついていないことでした。Braze導入後は、記者会見やレース分析などの魅力的な情報をWebプッシュ通知でリアルタイムに知らせることで、ユーザーが重要なコンテンツを見逃しにくい状況を改善できました。Webプッシュ通知の開封率は13.5%と高く、顧客体験向上のための新たなチャネルとして有効に働いています。
NASCARが、Brazeを導入しWebプッシュ通知でエンゲージメントを促進
4.4. 事例3
オンラインフードデリバリーサービスとして世界40ヵ国以上で愛されている「Delivery Hero」の取り組みは、先端技術を見逃さずに活用することでプロモーションに成功した事例として知られています。
2019年末、AppleはiOS12において「お試しプッシュ通知」という仕組みを提供しました。これは従来のプッシュ通知とは異なり、最初の一通のみはユーザーの許諾なしで通知を送れるサービスです。
Delivery HeroはBrazeとともにアニメーション付きの素敵な初回配信メッセージを作成し、メッセージ配信をまだ許可していないユーザー、すなわちお試しプッシュ通知の対象となる相手に送信しました。結果、iOSのリーチ可能なユーザーが36%も増加。すなわち「iOSデバイスを使っており、今後新たに通知を受け取っても良い」と考えたユーザーを36%も増やすことに成功しました。
5. まとめ
この記事では、Webプッシュ通知について、その仕組みや重要性、メリットや注意点をご紹介しました。
Webプッシュ通知は、ユーザーの情報を必要とせずにプロモーションを行えるなど、現代のビジネス環境に即したメリットがあります。その機能や活用方法をさらに知りたい場合は、以下のリンクよりぜひレポートをダウンロードしご覧ください。
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